前回は、相続放棄の申述期限の起算点について述べました。
今回は、相続放棄についての裁判所の扱いとこれについての問題点について述べていきます。
・・・(続きはこちら) 前回は、相続放棄の申述期限の起算点について述べました。
今回は、相続放棄についての裁判所の扱いとこれについての問題点について述べていきます。
まず、相続放棄については、法律上いくつかの制約(法定単純承認。民法921条。)がありますが、家庭裁判所の扱いとしては、相続放棄の申述の段階においては、厳格な審査は行わず申述を認めることも多いようです。
裁判例上も、家庭裁判所が申述を受理する段階では、要件を厳格に解釈することは妥当でなく、相続放棄の要件欠くことが明白である場合以外は相続放棄の申述を受理すべきである旨判示するものが見受けられます。
このように、明らかに法文上の要件に抵触しない限りは、相続放棄の申述の受理を認めることを明言しています。
しかし、ここで注意していただきたいのは、相続放棄の申述受理がされたからといって、相続放棄の効果が確定するわけではないということです。
債権者が相続放棄について認めない場合、最終的には訴訟によって決着をつけなければならない事態も考えられます。
すなわち、相続放棄の要件に疑義がある場合に、債権者等から債務の返還について訴えを提起され、これが認容されると相続放棄の効果が認められず、最終的には訴えられた相続人が被相続人の債務を負い続けるということになるのです。
もちろん、相続放棄の要件に何ら触れることがなければ、そのような訴えを起こされる心配もないでしょう。
実際に裁判が起こされた裁判例でも、相続放棄の効果を否定することにより相当程度高額な財産を回収できる見込みがあるような事例について、訴えが起こされている傾向があります。
裏を返せば、回収できる財産が少なく、回収可能性が少ない事案については「コスパが悪い」という見方もできるのかもしれません。
もっとも、少額の債務であっても、このような訴訟の可能性がないとはいえない以上、訴訟を起こされるようなリスクは完全に排除しておくべきです。
被相続人の死後、相続放棄をするにあたり、何をしていいのか(あるいはだめなのか)が分からないことも多いかと思います。
そのような場合は、お近くの弁護士まで是非相談してみてください。
次回は、何を上記のような「何をしていいのか(あるいはだめなのか)」と言う点についていくつかの例を挙げて説明していきたいと思います。