相続放棄③
1 前回は、家庭裁判所が相続放棄をどのように扱いをしているかについて述べました。
今回は、相続放棄を申述するにあたり、問題となる行為がどのようなものなのかについて述べていきます。
まず、原則を確認しておくと、被相続人の相続財産について処分等の行為をしてしまった場合、法定単純承認事由(民法921条)にあたり、その財産を処分してしまった相続人は相続放棄ができなくなります。
ただし、その相続財産の現状を維持するのに必要な行為(保存行為)をするような場合は、相続財産の処分とはみなされず、依然として相続放棄ができることになります(民法921条1号ただし書)。
これを踏まえて、以下の行為が問題となります。
2 行ってはならない行為
・財産を処分すること
例)売却、担保権設定、賃貸(民法602条の定める短期賃貸借を除く)、使用、建物の増改築、債務の返済、債務の返済を受ける、預貯金口座の解約、遺産分割協議・相続登記を行う等
・財産を隠匿すること(債権者に対し相続財産の所在を不明にすること)
例)物理的に隠す、在りかを知られていないタンス預金等を自分のものとしてしまう
・財産を私(ひそかに)に消費すること(相続財産を処分することによりもとの価値を失わせること)
例)相続財産を破壊・汚損等する、預金を下ろして費消してしまう等
行っても問題ない行為(法定単純承認とみなされない)
・保存行為
例)家の壁が壊れたので修繕した、マンションの管理費・共益費の支払い、固定資産税の支払い、火災保険の更新
・管理行為
例)水道光熱費等の支払い、携帯電話の契約の解約、墓石位牌等の購入、日常生活をする上で必要な修繕行為、民法 602条の定める短期賃貸借、葬儀費用を支出する(※)等
※これは程度問題であって、高額な葬儀費用を支出した場合は、相続財産を処分したとみなされる可能性はあります。
・死亡保険金の受取り
そもそも死亡保険金は、保険金の受取人の財産であって被相続人の相続財産を構成しないため、これを受け取っても法定単純承認にはあたりません。
3 上記は例の一部に過ぎません。特に処分行為の内容は多岐にわたり、また、その他の行為についても具体的事情により、相続放棄できるかできないかが異なる場合もあります。
そのような場合にどうすべきか迷われた際には、取りあえず「相続財産には一切手を付けず、現状維持をする」ことが、一番安全であると思われます。
その後は、弁護士等の法律の専門家にご相談ください。裁判例や過去の事案から当該行為が法定単純承認になるかどうか、アドバイスをすることが可能です。


