個人再生と不動産②(住宅ローンがある場合)
個人再生と不動産②(住宅ローンがある場合)
1 住宅ローンが組まれている不動産の場合
前回に引き続き、小規模個人再生手続きにおける不動産の評価について述べていきま す。
今回は、不動産に住宅ローンが組まれている場合についてです。
まず、説明に入る前に、前回述べた小規模個人再生手続きにおける清算価値基準について、もう一度確認していただきたいと思います。
清算価値基準とは、「債務者が自己破産をした場合、債権者に配当されるべき金額(財産)を下回ってはいけないというルール」のことを指します。
さて、住宅ローンが組まれている不動産(土地、建物)がある場合、住宅資金特別条項という手続きを使った小規模個人再生手続きを採ることになります。
ここで、住宅資金特別条項とは、住宅ローンを従前どおり支払いつつ、その他の債務を圧縮することにより、不動産を残すことができるようにする手続きのことをいいます。
2 不動産の清算価値について
この手続きを採った場合でも、前回に述べた清算価値基準が適用され、不動産の価額(≒適正な査定額)がプラスの資産として評価されます。
例えば、住宅ローンの残額が1500万円で、不動産の査定額1000万円であり、他にめぼしい財産がないというケースで考えてみましょう。
このケースでは、不動産の資産価値はマイナス500万円となり、他にめぼしい財産はないため、清算価値はゼロと評価されます。
したがって、清算価値基準だけを見るならば、再生手続きを行う上で特に支障にはならないでしょう。
次に、住宅ローンの残額が1500万円で、不動産の査定額2000万円であり、他にめぼしい財産がないというケースを考えてみましょう。
このケースでは、不動産の資産価値は500万円となり、他にめぼしい財産はないため、清算価値は500万円と評価されます。
この場合は、不動産の価値が高く評価され、清算価値が高くなりすぎた結果、再生計画の返済が困難にならないかという点に留意が必要です。
具体的には、清算価値が500万円ならば、これを36回~60回払いで返済(≒月8万4000円~13万9000円)していくことに加え、住宅ローンの返済も継続しつつ、かつ、家計が黒字になっている必要があります。
3 返済の可能性の有無
以上のとおり、住宅資金特別条項を使った再生手続きを選択したとしても、清算価値基準の観点から、支払いが現実的に可能といえなければ、住宅は必ず残せるわけではないということに注意が必要です。
なお、上記の例は、資産が住宅のみであり、他にめぼしい財産がない場合を想定しています。
しかしながら、実際は多種多用な財産があり、この財産も清算価値に含まれ得ることになります。
これをご自身のみで計上・算定することは難しいのではないかと思います。
このような場合、専門の弁護士にご相談していただき、適切なアドバイスを受けることをお勧めいたします。


